当社が行っているような形状に合わせた鍛造を行うことで組織の微細化と形状に適した方向性を持たせ、耐摩耗性に優れた刃物を作り上げることができます。
圧延された鉄板も一種の鍛造であり、一様な方向性を持ちます。しかしそれを形状に削り出すと繊維状の組織が切断され強度が劣ることになります。
鋏形状に切り出した場合の圧延鉄板
断面組織図解 |
山村の鍛造品(鋏)
断面組織図解 |
下記に当社の鍛造品と圧延鉄板との比較実験の結果を掲載しております。
鍛造材と圧延鉄板の組織比
「日立ATS314」の鍛造材(温間鍛造1回、冷間鍛造2回、真空球状化焼鈍2回、真空焼入れ、焼戻し、深冷処理)と圧延鉄板との組織比較を行った。
山村の鍛造品(鋏)
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圧延鉄板
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・山村の鍛造品の断面方向と平面方向
※黄色光のため、ブルーフィルター使用。
1-1) 断面組織 右上から左下への鍛流線が見える |
1-2) 水平面組織 (フィルター未使用) 組織が微細化しているように見える |
1-1)断面組織において鍛流線が鮮明に観察された。そこで実際どのようにファイバーフローが起きているかを断面において観察した。
山村の鍛造品(鋏)の部分断面組織
・圧延鉄板との比較
原材料のATS鉄板を焼入れし、圧延断面と水平面の組織観察を行った。
2-1)断面組織 特に方向性は見られない |
2-2)水平面組織 縦の圧延方向に対して組織の方向性が見れる |
圧延鉄板の断面2-1)よりわかるように断面からでは材料の方向性は見られなかった。しかし水平面(表面)の組織観察を行った結果、圧延方向に対して組織の方向性が見られた。
・考察
鍛造材料を観察した結果、組織が鍛造製品特有のファイバーフロー(鍛流線)が見られた。また鍛造材料表面では鍛造により組織が微細化していることがわかる。
圧延鉄板では圧延方向に対して方向性が見られたが、断面組織において、方向性は見られなかった。
鍛造材の断面にてファイバーフローが見られたことから、刃物の材料に必要とされる硬さだけではない材料強度、耐摩耗性、靭性が向上していると考えられる。
※自動車のエンジン、ブレーキパッドなど強度、耐磨耗に信頼性が必要な部品では同じように鍛造が使われている。また、刃物の最高峰である日本刀も鍛造品であることは言うまでも無い。